私はどこまでも孤独を愛し 熱く湿った感情を嫌いますので‥









宮沢賢治「春と修羅・第二集」より




















 「雨ニモマケズ」の大いなる誤解

  宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を大抵の人は、「とにかく、人生努力が大事だ」といった風に解
釈しているようだが、それは誤解である。そもそもこの詩は、手帳の片隅に書かれていたもの
であって、ラストの「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」を見て分かるように、虚弱な体にムチ打
って、農民のために農業指導に奔走し、37才の若さでこの世を去った宮沢賢治の、「こういう風
に生きたい」という願望であって、何もそれで説教をしようと、この詩を作ったのではない。

 「世界全体幸せにならない内は、個人の幸せはありえない」という、壮大な理想を追い求めな
がらも、それが実現不可能と悟った時、「永遠の未完成、つまりこれ、完成。」という、ニヒリズ
ムの極致のような言葉を残した彼が作った、切ない魂の詩なのである。安っぽい応援歌と同列
にすべきでない。



  

  ビデオ屋に行った。AVコーナーで、中古品が百円で売られていた。その中のひとつに、50人
の企画AV女優達が全裸で運動会をするという、アホみたいな企画の作品があった。人気AV
女優は、一本で何百万円ものギャラを手にするらしい。しかし彼女達は、そんな高額なギャラを
貰うこともなく、芸名も付けてもらえず、ひと盛りいくらの扱いをされ、挙句の果て、出演した作
品が百円で叩き売られている。

  何だか、無性に悲しくなった晩秋の夕暮れ‥



   まっすぐ

  僕の話を聞いてくれ 笑い飛ばしてもいいから
  ブルースにとり憑かれたら チェインギャングは歌い出す
  仮面を付けて生きるのは 息苦しくてしょうがない
  どこでもいつも誰とでも 笑顔でなんかいられない

  人をだましたりするのは とってもいけないことです
  物を盗んだりするのは  とってもいけないことです
  それでも僕はだましたり物を盗んだりしてきた
  世界が歪んでいるのは僕のしわざかもしれない

  過ぎていく時間の中で ピーターパンにもなれずに
  ひとりぼっちが怖いから ハンパに成長してきた
  何だかとても苦しいよ ひとりぼっちで構わない
  キリストを殺した者は そんな僕の罪のせいだ

  生きているっていうことは カッコ悪いかもしれない
  死んでしまうということは とっても惨めなものだろう
  だから親愛なる人よ その間にほんの少し
  人を愛するってことを しっかりとつかまえるんだ

  ひとりぼっちが怖いから ハンパに成長してきた‥


  http://www.youtube.com/watch?v=o2R9oVqOksA



ザ・ブルーハーツの「チェインギャング」という曲だ。
16才の時、初めてこの曲を聴いた。
これからは、自分に正直に生きようと決めた。
そして、数少ない友達が、さらに少なく‥



  ジョニーは戦場へ行った 僕はどこへ行くのだろう

  ニュースを観た。山の上から巨大な岩が転がり落ちてきて、下の道路を走っていた車を押し
潰し、運転手が死亡した。もし、車が一秒でも早くその場を過ぎていたら、事故は免れていただ
ろう。こういうニュースを観るたび、結局、運命というものは生まれた時から決まっていて、努力
や気合いだけではどうにもならないことがあるのだと、つくづく感じる。ため息さえ出ない。



  人生の苦労の大半は“しなくてもいい苦労” 
  そして「苦労は買ってでもしろ」と言うリアルを知らないクソ偽善者ども

  日曜日、大阪の繁華街に行った。子供を北朝鮮に拉致された両親が、寒空の下、署名活動
をしていた。二人とも70才を越えている。本来なら、孫に囲まれて過ごしてても、おかしくないは
ずの日曜日なのに‥。

  「現世で起こる不幸は、全て、前世で犯した罪によるものです。」
 テレビで宗教家のオッサンが、分かったような顔をして話していたのを思い出した。何をアホ
なことをぬかしとるんじゃ、と思ったが、もう、そうでも考えなければやってられなくなった。

‥一体何やねん、この星は!



  神の悪ふざけ

 2009年10月、深夜のドキュメント番組を観た。西島祥子さんという24才の女性を取り上げて
いた。彼女は幼い頃からの夢だった看護師になるため、高校卒業後、大学の医学部看護学科
に入学した。しかし、大学に入学した18才の時、CRPS、固定ジストニアという二つの難病を発
症した。CRPSは体に強い痛みが続く難病で、固定ジストニアは筋肉が思い通りに動かせず、
手足が変形する難病だ。どちらも原因不明で、治療方法が確立していない。日に日に病状は
進み、左手と両足が動かせなくなった。看護師の資格は得たものの、このような体では看護師
の仕事は務まらないと、採用してくれる病院は無かった。それでも彼女は当たって砕けろの気
持ちで、数多くの病院に履歴書を送ったところ、ある病院に事務職として採用された。自由が
利く右手だけでパソコンを操作して働いていた。
「ちゃんと働いて、税金を納めていると、障害のある私でも、社会の一員なんだなと実感する」
と語っていた。

「今は病気で苦しんでいるけれど、いつか画期的な治療法が確立され、病気を克服して元気な
体になればいいのにな‥」
番組を観ながらそんなことを思った。
そして番組はエンディングとなり、終了間際、無機質なテロップが表示された。


  この番組は2009年5月に放送されたものの再放送です。
  2009年9月、西島祥子さんは永眠されました。
  心よりご冥福をお祈りします。


‥体中の力が抜けた。

何でこんな真面目でまっすぐな人が難病に侵され、若くして亡くならなければならないのだろう。


  例えば、この世に神が本当にいたとする。
そして、その神は、地球上の全ての人間の運命を決めることが出来るとする。
それならば、なぜ彼女をこのような運命の人生にするように選んだのだろう。

我が子を虐待して殺す鬼畜親。
従業員に残業代を支払わずに長時間労働を強制して、過労死させている守銭奴経営者。
軍需産業を儲けさせるために戦争を仕掛け、何の罪も無い多くの市民を殺している戦争指導
者。

世の中にはチンカス以下のクズどもがたくさんいる。
そういう奴らが病気で苦しめばいいのに、何で彼女がこのような運命になったのだろう‥

何だか、もう全てがどうでもよくなった。



<西島祥子さんの作品サイト>
http://crpsdystoniapoem.takara-bune.net/


<西島祥子さんのブログ>
http://crps-demo-waraouyo.seesaa.net/





  トゥーマッチペイン

  深夜のドキュメント番組を観た。「健常者と障害者の恋愛は成り立つのか」というテーマのも
のだった。ある一組の夫婦を取り上げていた。健常者の妻と、重度の障害を持った夫だった。
女性は、親や親戚の猛反対に合いながらも結婚に踏み切り、今も幸せに暮らしている。
番組では、同じように重度の障害を持つ、一人の男性にインタビューを行っていた。
「そんな例は本当に奇跡のようなもので、結局、僕達は人の手を借りなければ、日常生活の何
ひとつ出来ない。そんな人間が、健常者の女性と結婚出来るわけがないじゃないですか。」
重い言語障害を持つ彼は、ふり絞るようにして答えた。そして、最後にこうつぶやいた。

「垣根があるんですよ‥」

あまりにも重い言葉だった。




  バイナラ

  電車に乗っていた。駅に着き、乗客が乗り込んできた。その中の一人のオッサンが、俺の前
まで来て、俺の膝の上に座ろうとした。オッサンは座る直前に俺に気付き、「あ、すんまへん」と
言って、空いたシートに移動した。そのオッサンはボーッとしてたわけでも、酔っ払っていたわ
けでもないようだった。ただ単に、俺が<見えなかった>ようだ。

  そんなに影が薄くなっているのか‥。もう、死ぬのかな‥




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